大規模修繕工事の工事会社を決める場合、入札方式で一番安い会社に発注すれば問題ない?
Q.大規模修繕工事の発注は、入札金額が一番安い会社に発注すれば問題ないですか?
公募した複数の工事会社に見積りを依頼しました。見積に際しては、設計事務所に依頼して共通仕様書を作成してもらい、同一条件で行いました。
金額も管理組合で設定している予算内に収まりました。入札をしたのですから、一番安い会社に発注するべきと思います。
A.全くの間違いではありませんが、いくつかの前提条件をクリアーしている必要があります。
1番目は、最安値を提示した会社の金額が予算内に納まっていることは当然として、その金額がダンピングされた金額でないことです。
どうしても受注したい会社は、必要以上に金額を下げてなんとしてでも受注しようと考えます。その結果、実際の工事はレベルの低い現場代理人がついたり、職人さんの数が足りなくなったり、品質の低い工事や居住者の不満が溜まる工事になる場合があります。
2番目は、談合が行われずに適正な競争が行われているということです。
この業界には談合はつき物で、私も何回も見てきました。予算内に納まっているからと安心して発注しても、結局は大変高い買い物をさせられたという結果になります。
3番目は、その会社の信用状況です。つまり長期にわたり健全な経営状態で会社が存続する必要があります。
大規模修繕工事は、工事内容によっては10年や15年の保証をしてもらう必要がある工事項目があります。
つまり、発注は安くできても、その後にその会社が倒産してしまったら、管理組合は十分な補償が得られません。
以上のようなことに注意して最終の発注を決断する必要があります。
マンション管理士さんが理事長の代わりに裁判をやってくれますか?
Q.理事長の代わりにマンション管理士さんが裁判を担当してもらうことは可能ですか?
管理費等を滞納している区分所有者がいるので、理事会では法的措置をとるべきとの判断です。
理事長は、平日は勤務していますので裁判所に行くことは難しいのですが、マンション管理士さんが理事長の代わりに裁判をすることはできますか?
A.弁護士資格を持たないマンション管理士が訴訟代理人となって裁判をすることはできません。
弁護士法第72条の規定により、弁護士資格を持たないマンション管理士が訴訟代理人となって裁判を追行することはできません。弁護士法違反になります。
ですから、理事長さんが管理組合の代表者となって本人訴訟として裁判をしていただくことになります。
マンション管理士は、訴状の作成補助や提出(訴状の提出自体は郵送でもできます。)、裁判所との連絡調整係等のお手伝いをしますので理事長さんは口頭弁論当日に裁判所に出頭していただくだけで結構です。
マンション管理士や管理会社は傍聴席で待機していますので、理事長が裁判中に分からないこと等は助言も可能です。
また、相手が出頭してきた場合は、司法委員が間に入って和解の手続を行うことになりますが、その時はマンション管理士や管理会社も同席し、遅延損害金の計算や分割払いとなった場合の返済回数の計算等をして理事長に助言することが可能です。
複雑な相続や事実関係について当事者間に争いがある場合は最初から弁護士さんに依頼して裁判を進めたほうが楽だと思いますが、そうでない場合は、弁護士さんを起用しないで裁判を行うことはさほど難しくありません。
また、究極の選択方法としては、区分所有法第25条の規定を適用して、第三者(例えばマンション管理士等)を管理者として選任し、管理者に裁判をやってもらう方法もあります。
裁判で勝ったら、滞納管理費等は必ず回収できますか?
Q.裁判で勝ったら、滞納管理費等は必ず回収できますか?
長期にわたり管理費等を滞納していた区分所有者に対して裁判を行い、勝訴する判決をもらいました。
裁判に勝ったら滞納されていた管理費等を回収することができますか?
A.裁判で勝っても必ず回収できるとは限りませんが、やっただけの効果は必ずあります。
管理費等の滞納に関する裁判は、よほどのことが無い限り管理組合が負けることはありません。管理組合の請求を認めさせるだけの資料や証拠をそろえることが比較的容易で、滞納している相手と争う要素もあまり無いからです。
滞納している区分所有者が裁判所に出頭してきた場合は、「和解」というかたちの話合いで解決する場合もありますし、「判決(債務名義)」をもらったらそれを基に相手の給料や預金等を差押えることもできます。
またマンションを競売にかけて回収することもできます。
但し、勤務先が不明だったり、差押える財産がなかったり、不動産に抵当権が付いていたりすると、裁判でせっかく勝訴しても簡単に回収できない場合もあります。
しかし、滞納者に対して裁判を行うということは、滞納は絶対に許さないという強いメッセージを全組合員に発する効果や、時効を中断したうえで5年の時効を10年に延ばす効果などがあります。
私の過去の経験においても、裁判をやったけれど結局何の効果もなかったということはありません。
管理費滞納に対する裁判は、管理組合独自でも実施できますか?
Q.弁護士さんにお願いしなくても、裁判を行うことは可能ですか?
管理費等の滞納に対しては、早めの対応が肝心だとききました。
そこで滞納している区分所有者に対して裁判を実施しようと考えていますが、金額が10万円程度なので、費用対効果を考えた場合弁護士さんを起用してやるほどのことでもないと思います。
弁護士さんにお願いしなくても裁判を実施することはできますか?
A.早めに対応するのであれば、理事長さん本人が訴訟を行うことで対応できる場合があります。
管理費等の滞納は放置しておくとだんだん金額が大きくなって回収も困難になります。
そこで私の個人的な意見ですが、管理費等の滞納に対しては費用対効果だけを考えて対応するべきではないと考えています。
とはいっても、10万円程度の裁判を弁護士さんにお願いして実施するのもつい考えてしまいます。
私は、金額の小さいうちは理事長が管理組合を代表して本人訴訟として対応することをお勧めしています。
このくらいの金額であれば「少額訴訟」や「支払督促」を利用して法的措置をとることが可能ですし、申立の書式や書き方も裁判所のホームページからダウンロードすることもできます。
重松マンション管理士事務所は、プロナーズを通じて弁護士とも顧問契約をしており、管理費等の滞納問題に対しても適正に対応する体制がありますのでご遠慮なくご相談ください。
競売にかかった費用は回収することができますか?
Q.競売にかかった費用は回収することができますか?
裁判での判決を基に、滞納している区分所有者のマンションを競売にかけることにしました。
申立費用の他に、予納金として60万円を納めるようにいわれましたが、そのお金は管理組合に戻ってくるのでしょうか?
競売をして、滞納金額を回収することができたとしても、60万円以上の費用をかけたのでは、結局はないをしていたのか分からなくなってしまいます。
A.競売に要した費用は原則として全額戻ってきます。
裁判をして判決をもらった場合は、強制執行等を行うことができますが、滞納している区分所有者のマンションに抵当権が設定されていない場合は競売によって債権を回収することができます。
競売を実施するには、申立費用(4,000円前後)と差押えに要する登録免許税の費用の他に、競売費用として60万円(債権額により決められている。)の予納金を納める必要があります。
しかし、この予納金は競売が成立した後は最優先で競売を申立てた管理組合に返還されますので、実質的には管理組合の負担にはなりません。
但し、全部が戻ってくるのは、競売に関する裁判所の業務が完了し、精算事務が終了してからになります。
なお、物件の価格と滞納金額によっては、例外もありますので詳細は事前に裁判所に確認してください。
裁判費用や弁護士報酬等は滞納区分所有者に請求できますか?
Q.裁判費用や弁護士報酬等、督促に要した費用は滞納者に請求できますか?
管理費等を滞納している区分所有者に何回も督促をしているのですが、全く払ってくれないので裁判を行いようやく回収できる目途が立ちました。
ところで裁判費用や弁護士さんに支払った報酬等、督促や回収に要した費用は相手に対して請求できるのですか?
A.必ず回収できるとは限りませんが、管理規約にその旨を定めておいた方がよいと思います。
裁判を実施して管理組合の主張を認める判決が出ると、多くの場合は判決文に「訴訟費用は被告の負担とする。」と書いてありますので理屈としては裁判費用は相手に請求することができます。
しかし、裁判費用(印紙と切手)はたいした金額ではなく、裁判後にそれを請求する手続も結構やっかいなので実は請求しない場合のほうが多いのです。
問題となるのは弁護士報酬ですが、こちらの方は裁判でも認められる場合とそうでは無い場合があるようです。
そこで、弁護士さんに支払う報酬(催告書の作成費用や裁判を行う際の報酬)や、不動産登記事項証明書等の取得費用、内容証明郵便の送達費用など、督促や回収に要した全ての費用は「違約金」として滞納している区分所有者に請求できる旨の規定を管理規約に定めておくことをお勧めします。
国土交通省が公表している「マンション標準管理規約」にもその旨の条文があり、民法上は第420条に、違約金は損害賠償の予定として有効な定めとなっています。
但し、上記のように管理規約に定めたからといって必ずしも回収できるとは限らないようです。
私の場合は、過去に特定承継人に対して、滞納していた前区分所有者のためにかかった弁護士費用等を請求し、相手が支払わなかったので裁判に訴えたことがありますが、その時は請求を認める判決を勝ち取りました。
しかし、逆に認めてもらえなかった例もあるとのことです。
それに比べて遅延損害金は、否定されることはまずありませんから督促費用の穴埋めのためにもぜひ管理規約に規定しておくことをお勧めします。
大規模修繕工事の見積書は各社の仕様や金額がマチマチだから比較が困難
Q.大規模修繕工事の見積書を工事会社に頼んだのですが、金額や仕様がマチマチで比較できません。
大規模修繕工事の実施予定があるので、インターネットや専門雑誌で調べた工事業者数社に見積を依頼しました。
ところが、金額に大きな開きがありどの会社に決めたらよいのか分かりません。また、工事内容も各社の話を聞いていると少しずつ違うようです。
A.統一された仕様を作成して見積依頼をすればそのようなことはなくなります。
管理組合が、それぞれ個別の専門業者(設計コンサルタントや工事業者)と折衝し、予算書や見積書を取得した場合は、そのようなことがよく起こります。
基本的なポリシーがなく、思いつきの発想で業者から金額の提示を受けることを繰り返していると、金額や仕様もバラバラで収拾がつかなくなります。
金額の比較を同一条件で行うためには、統一された仕様・数量に基づき、現場下見や質疑対応等の過程を経て各社に同じ土俵で競争してもらう必要がありますが、管理組合自らがこの作業を行うことは大変難しいと思います。
マンションの現況を調査し、管理組合の意向を汲み取ったうえで共通仕様書を作成する業務は専門家に任せたほうが楽だと思いますし、結局は安上がりになります。
重松マンション管理士事務所では、管理組合が大規模修繕工事を進めるに当たり、勉強会から始まりコンサルタント選定から工事業者の選定など、管理組合の合理的な合意形成を円滑に進めるお手伝いを行います。
大規模修繕工事の実施時期は決まっているのですか?
Q.大規模修繕工事の実施時期は決まっているのですか?
管理会社の担当者の方から、「もう10年経ちましたから大規模修繕工事の時期です。来年はやらないといけませんよ。」といわれました。
10年経ったら必ず大規模修繕工事を実施する必要があるのでしょうか?
A.経過年数だけで大規模修繕工事実施の有無を判断するべきではありません。
マンションで一定期間ごとに実施する計画修繕を大規模修繕工事と呼んでいます。
この工事は、予防的な保全措置も含んだ修繕工事なので、建物の傷んだ部分だけを修繕したり、傷みが激しくなってから実施するような工事とは性格が違います。
マンションの資産価値を適正に維持するために、傷みが大きくなる前に計画的に実施する工事で、たしかに1回目の大規模修繕工事は竣工後12年前後といわれています。
しかし、何年(例えば12年)経ったから必ず大規模修繕工事を実施する必要があるというものでもありません。
大規模修繕工事には、みんながコツコツと積み立てた大切な修繕積立金を使って行いますので、できることならば無駄遣いをしないで効率的に実施する必要があります。
多くのマンションでは分譲時に販売業者が作成した「長期修繕計画」があると思います。この長期修繕計画を指針として修繕計画を実施して行くことになりますが、現在のマンションの状況は10年前の分譲時の状況とは大きく違っている場合もあります。
思ったほど傷んでいないので必ずしも12年目に実施する必要もないとか、大規模修繕工事を実施したいが資金的に厳しいとか、足場を架けて実施する大規模修繕工事は後3年先でも大丈夫そうだが、鉄部のサビは進行しているので来年は鉄部塗装工事を先行して実施したいなどさまざまです。
本格的な建物診断を実施していないのであれば、10年目を一区切りとして建物診断を実施して、修繕計画を見直すことも重要だと思います。
大規模修繕工事を計画していますが、住民に建築や設備の専門家がいないとできませんか?
Q.マンションの大規模修繕工事は、居住者に建築や設備の専門家がいないとできませんか?
私達のマンションも大規模修繕工事を実施する時期になってきました。準備に入ろうと思いますがどのようにして進めて行ったら良いのかよく分かりません。
住民の中には、建築や設備に関する専門家がいないのですが大丈夫でしょうか。
A.大規模修繕工事はマンション内に専門家がいなくても問題ありません。
よく、「うちのマンションには1級建築士が住んでいるのでその人にお願いして協力してもらえば大丈夫!」とおっしゃる方がいます。
全くの間違いとはいいませんが、一概に1級建築士といっても意匠、構造、設備などさまざまな分野があります。そして大規模修繕工事は、居住者が生活をしながら行う工事であり、新築工事とは勝手が違います。
マンションに住んでいる1級建築士が必ずしも大規模修繕工事に精通しているかどうかは不明です。
これは私の自論ですが、自分の職業に自身と誇りを持っている専門家であれば、お金にもならず、一歩間違えばそのマンションに住みづらくなる可能性もある自分のマンションに対し、専門家として関与することはありません。
また、その専門家はあくまでも自分のマンションの「当事者」であり、冷静に物事を判断できる「第三者」ではありません。
大規模修繕のように多額のお金を使って行う事業は、公平性や透明性を担保し、適切な情報開示をしながら進めて行く必要があります。
このようなときこそ、信頼できるパートナーを選んで、管理組合が判断できる資料や情報を提供してもらえれば、管理組合は適切な判断をしながら一大事業を遂行することができます。
必要なのは、専門性を持った住民ではなく、社会人としての一般常識を持った住民なのです。
長期修繕計画書に書かれている工事金額は実際に取引されている金額ですか?
Q.長期修繕計画書に記載してある工事金額は実際に取引されている金額ですか?
専門家に依頼して長期修繕計画書を作成してもらいました。
この後は、この計画書に基づき修繕積立金の見直し作業を行いたいと考えています。
工事金額については、よく「設計価格」とか「施工価格」のような言葉を聞きますが、長期修繕計画書に書かれている工事金額はどのようなレベルの金額だと理解したらよいのでしょうか。
A.長期修繕計画書に書かれている工事金額は概算金額と考えてください。
長期修繕計画書は、マンションの今後25~30年を見据えて、修繕予定や修繕実施時期並びに資金計画を概算レベルで把握するための資料です。
長期修繕計画の意義は、主に以下の3つです。
- 修繕内容(仕様、概算金額、実施時期)を組合員に周知する。
- 指標として公表することにより、大規模修繕工事の際に、組合員の合意形成を円滑に進める。
- 必要な修繕積立金の具体的な金額を算出するための資料とする。
しかし、工事金額や工事実施記事は必ずしも高い精度で作製しているわけではありません。
将来の物価上昇や消費税を含む法律の変更、更には生活水準の向上によるグレードアップ等に備えてどちらかといえばやや高めに設定する場合が多いものです。
一般的な言葉でいうと「定価」のようなものだとご理解ください。建設業界では定価のことを俗に「設計価格」といいます。
設計事務所が予算として提示するのでそのような言い方になったのかもしれません。
実際には、適正な競争が行われれば設計価格の70~80%程度で発注できる場合が多く、このときの金額を俗に「施工価格」とか「実行価格」と言ったりします。
また、長期修繕計画書はマンションにとって非常に重要なものなので、その内容については、総会に諮り承認を採る管理組合が多くなっています。(マンション標準管理規約単棟型第48条第5号)
また、一度作成しても、概ね5年ごとにその内容を見直して、最新の長期修繕計画書にしておくことが、管理組合にとって重要なことだと思います。