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マンションペット飼育問題事例〜ペット禁止からペット可になるまで

マンションにおけるペット問題の取組みについてご紹介します。
重松マンション管理士事務所では、過去にも複数のペット問題に取り組んで解決した事例がありますが、今までは事例の紹介等は行っていませんでした。
ペット問題は極めて繊細な要素を秘めており、うかつにご紹介すると思わぬ誤解を招く恐れがあるからです。
ペット飼育に対して容認派の人と賛成派の人が話し合う会議にも何回も出席しましたが、最初に「双方冷静に話し合ってください。」とお願いするのですが、なかなかそうもいかず怒鳴り合いの結果になったこともありました。
最近では、ペット飼育ができるマンションの数も増えて、ペットによるトラブル相談も、以前よりは少なくなりましたので、このあたりを契機として、ご紹介する気になりました。
2004年(平成16年)から、顧問契約を締結している管理組合です。
管理規約でペットは禁止となっています。というよりは、もともとが「他人に迷惑を及ぼす動物の飼育を禁止する。」という条文がマンション使用細則に記載されていただけで、いわゆる「あいまい規定」というものでした。
規約があいまいだということもあり、2006年に規約改正を行った際には、明確に管理規約で「ペット禁止」を規定しました。
ところがその後、ペットを飼育する家庭が徐々に増えて、20%弱の住戸がペットを飼育していることが管理員さんの報告等で分かりました。
当然に、ペット飼育に関する苦情が理事会に寄せられるようになり、2009年にはペット飼育に関するアンケート調査も実施しました。
当時のアンケートの内容は、

  • ペットを飼育しているか?
  • 飼育している場合はその頭数(犬、猫に関して)
  • ペット飼育についてどう思うか?
  • ペット飼育を認める検討をしてもよいか?
  • その他自由意見

などでした。当時はペット飼育に対しての批判的な意見が多く、実施したアンケートを基にして新たな管理の道筋を見出すことはできませんでした。
その結果、理事会としては「ペットは禁止となっています。」という注意喚起を継続的に実施するしかありませんでした。
一般論として、ペット禁止のマンションにおいて、理事会がペット問題にきめ細かく対応することは結構骨が折れます。
理由はいくつか考えられますが、、、私が考えるには。。。

  1. 多くの場合、理事会はペット問題よりも優先して取り組むべき課題を抱えていること。(例えば、日常の管理の他に、大規模修繕工事の実施、管理費等の滞納問題、管理コストの削減問題などがあげられます。)
  2. 生き物が関係しているので、実際に違反している居住者に対して、「飼育をやめてください。」とか、「外に預けてください。」とか、ましてや「処分してください。」などと簡単にはいえないこと。
  3. よほどの迷惑行為を繰り返さない限り、単に規約に違反してペットを飼っているというだけで、法的措置などの強硬策を取りにくいこと。
  4. そもそも分譲時に分譲会社がいい加減なことをいって、「ペットを飼っても構いませんよ。」と取れるような発言をして分譲している場合があり、飼っている人にルール違反をしている意識がない可能性が高く、注意をすると強く反発される恐れがあること。
  5. 最近分譲されている新築マンションの多くはペット飼育が可能であり、世の中の流れがペット飼育を容認していること。

等があげられると思います。
ペットが苦手な人で特にアレルギーなどをもっていらっしゃる人は、ペット問題はご本人や家族の健康問題にも関係する深刻な問題だと思います。
しかし、あくまでも私の個人的な意見ですが、高齢化や一人暮らしの世帯が多くなっている今日において、ペットの存在意義もそれなりに認められるのではないかと思います。
また、ペット禁止のマンションとはいえ、絶対にペットを飼わせないように管理することは、理事会の負担も大きくなりとても難しいことだと思います。
できることならば、ペット飼育に否定的な居住者の理解を得て、厳格なルールのもとに飼育を認め、ペットが嫌いな人も好きな人もお互いを理解して、迷惑をかけずに生活できる環境を作り上げることがベストではないかと最近特に感じるようになりました。
このマンションでは、ペット飼育に関する苦情が再燃した昨年から「根本的なペット問題の解決」に取り組むことを理事会で決定し、大変な作業に取り組んできました。

再アンケートの実施

基本的には、前回実施したアンケートの内容から大きく変わる質問はありませんでしたが、回答内容を細かく分析してみました。

  1. アンケートへの回答率が45%だったこと。

    【分析】逆にいえば55%の人はあまり関心がなく、どちらでもよいと考えているかもしれない。(つまり強硬に反対はしない。)

  2. 回答した人の、48%が飼育容認、41%が飼育反対、11%がどちらでも良いという内容だったこと。

    【分析】明確に反対の意思表示をしている人は全体の18~20%程度であると予想される。(45%×41%)

  3. ご意見の中には、犬や猫そのものが嫌いなわけではなく、飼い主の飼育マナーや動物が苦手な人に対する配慮のなさへの指摘が多かったこと。

    【分析】飼い主側がもっと自覚をもって、ペットが苦手な人に対する配慮ができれば、反対している人たちを説得できるかもしれない。

理事会では以上のように考えました。

ペット飼育容認派と反対派それぞれから意見をうかがう意見交換会の開催

アンケート集計結果の報告を行うとともに、双方の考えをお持ちの居住者に意見をうかがう「意見交換会」を開催することにしました。
意見交換会は、まずペット飼育を認めてほしい人又は認めてもよいと考えている人だけを対象に実施し、ペット飼育に反対の人に対し、どのようにしたら理解してもらえるかという点について、意見交換を行いました。もし、ペット飼育を認めてもらえるならば、、、

  • 厳格なペット飼育細則の制定に従い、ルールやマナーを守る。
  • ペットクラブを発足し、ペットを飼育するにはペットクラブに入会することを前提とする。
  • もし、ペット飼育に関するトラブルや苦情が発生したら、ペットクラブが窓口となって問題解決に取り組む。

等の強い意志が感じられました。
前回のアンケート後の雰囲気とは明らかに違っていました。今回は、ペットを飼育していた人の中に、事前に関係する各戸を回り出席を要請したり、どうしても出席できない人に対しては委任状を出してもらうなどして、何とかこの問題を先に進めたいとの強いリーダーシップを発揮してくださる方がいらっしゃったことも理由の一つだったと思います。
次に、ペット飼育に対して反対の意見をお持ちの方だけを対象とした意見交換会も実施しました。
最初に、ペット飼育を希望する人たちの意見交換会の状況などを報告し、その後に飼育反対の立場の方たちの意見をうかがうことにしました。
飼育賛成派のときほどの出席はありませんでしたが、出された意見をまとめると

  • そもそもペット飼育の容認を前提として議論が進んでいるのはおかしいのではないか?まずは、ペット飼育の禁止を徹底するべきではないか。
  • 仲介不動産業者から、このマンションはペット飼育禁止であるということを聞いて最近購入したのに話が違うではないか。
  • 世の中の流れは理解するとしても、そもそも現在の管理規約を守ることができない人たちに、ペット飼育細則なるものを順守することができるとは思えない。

などかなり厳しいものでした。
言われてみると、どの意見も全くもっともなご意見だと思います。しかし、管理組合としてペット飼育禁止を徹底しようと思っても、前述のような理由で徹底できないのが実情です。
理事会でできないのであれば管理会社にやらせればよいとの意見もありますが、現実問題として、飼っている住戸のすべてを訪問してペットを飼わないように説得して回ることはできません。
結局は、注意喚起のポスターの掲示や回覧等で「飼育は禁止されています。」という趣旨のことを繰り返すしかありませんし、もともとがペット飼育禁止ですから、「ペットをエレベーターに乗せるときは云々・・・」などのルールも作ることはできませんし、ペットを想定した施設整備もできません。
出席者には、以上のことを丁寧に説明するようにして、本日出たご意見を踏まえて理事会で今後の進め方を議論することにしました。

理事会での結論

2回の意見交換会を経て理事会で議論された内容は概ね以下の通りです。

  1. 理事会としては、この問題に踏み込まずに先送りし、従来通り「ペット飼育禁止」の注意喚起を続けることが一番負担が少ない。
  2. しかし、根本的な問題解決とはならず、定期的に問題(苦情)が発生する。そして、そのときの理事会が何らかのガス抜き対策を繰り返すことになる。
  3. この際管理規約を改正するとともにペット飼育細則を制定し、厳格なルールのもとに飼育を認める方が問題解決につながるのではないか。
  4. 更に、ペットクラブを結成して、運営のためのペットクラブ会則も制定し、ペットに関するトラブルや苦情が発生した場合は、ペットクラブに責任をもってもらい、問題解決のための1次対応をやってもらう。
  5. それでも、細則や会則に違反してペットによる迷惑行為を行う居住者に対しては、今度は「飼育禁止」等の厳しい処置を取る。

以上のことを前提に、理事会では、ペット飼育を認める代わりに厳しい飼育ルールを作成して管理運営する方向で進むことを決議しました。
進め方は、臨時総会を開催して規約改正とペット飼育細則の制定を議案化することにしました。

説明会の開催と臨時総会に向けた準備

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重松マンション管理士事務所で、管理規約の改正案、ペット飼育細則とペットクラブ会則の案を作成して、説明会を開催することにしました。
規約及び細則の案は、マンション管理センターからの資料を基に、私たちがお手伝いしているペット飼育可のマンションの事例等も参考にしています。
また、今回はペット飼育に賛成の居住者と反対の居住者に対して同時に開催して説明を行い、その後ご意見等を頂戴することにしました。当日は、過去の意見交換会よりもはるかに多くの関係者が出席してくださいました。
冒頭に理事長から過去の経緯、理事会の取り組み状況報告を行い、理事会の方針と説明会の趣旨等を説明しまし、議論に入りましたが、当日出た質問やご意見の概要は以下の通りです。

当日の主な質問及びご意見とそれに対する理事会の対応策等

Q:実際に運営するペットクラブのマネージメントはきちんとできるのですか?
A:理事会が指導監督するとともに、住民からの苦情(意見)受付票などを整備して対応することとします。
Q:エレベーターにはペットを乗せないようにしてもらいたい。
A:当マンションの階数を考えると禁止は難しいと思います。しかし、理事会では2台あるエレベーターの内、1台を「ペット禁止」にし、さらにペットが乗っていることを知らせるランプ等を検討することにします。
Q:飼育されているペットの顔写真等を掲示してほしい。
A:顔写真の他に、登録されたペットの部屋番号、飼育者、犬種等、名前を公開するようにします。
Q:飼育細則案をみると、飼育は2匹までとなっているが現在3匹以上飼育している世帯はどうなるのですか?
A:現在3匹飼育している住戸は1件のみです。1代限りの特例として認め、細則の附則に記載して運用し、その後は一切認めないルールとします。
Q:トラブル時にはペットクラブが誠意をもって対応することになっているが「誠意」とはどのようなものか?
A:「誠意」とは、困っている人の身になって対応することだと理解しています。
Q:細則に、「ルールを守らない飼育者には理事長が禁止措置を取ることができる」とありますが、どのような権限に基づくものですか?
A:管理規約に規定されている理事長の指示・勧告によります。
Q:違反した場合の罰則は設けないのですか?
A:管理組合運営は居住者の自助努力を前提としているので罰則制度はなじまないと考えています。ルールに違反してペットの飼育ができなくなることが最大のペナルティと考えます。
Q:ペット飼育を解禁したら今後ペットが激増する心配はないですか?
A:統計的に見て、どこのマンションでも多くて20%程度であり、激増は考えにくいと思います。
説明会では、以上のようにいろんなご意見等が出ましたが、理事会ではその意見を検討し対応できるものについては極力対応するように進めています。
この後臨時総会に臨むことになりますが、その結果は後日報告いたします。

管理会社のフロントマンを対象とした勉強会の講師をしました。

過去に重松マンション管理士事務所大規模修繕工事のコンサルティングを行った都内のマンションですが、そのときのご縁で今回は管理規約と細則の改正作業のコンサルティングを実施しています。
たまたまそのマンションを管理している管理会社からの依頼で、社内勉強会の講師を担当することになりました。
講演テーマは「マンション管理士から見た管理会社の問題点と現状」で、サブタイトルは「マンションフロントマンのあるべき姿」です。
当日は管理会社のフロントマンの他、社長や役員も出席されましたので私もかなり緊張しました。
講演内容は

  1. 重松マンション管理士事務所は管理会社をどのように見ているか。
  2. マンション管理士と管理会社の双方の誤解
  3. これからの管理会社のあるべき姿
  4. 管理組合のために何をやるべきか

等です。
私から冒頭に、「管理組合が頼りにしたい一番身近な存在が管理会社であるはずなのに、実は頼りにならない存在となってしまっている。」という趣旨のコメントをしましたので、普段の勉強会とは少し違った雰囲気の勉強会になりました。
私が強調したかったことは、管理組合にとって、管理会社はなくてはならない存在であるとともに、双方の関係は極めて特殊な関係にあるということです。いくつかの例を挙げると、、、

  • 多額のお金を預かって管理してもらうことから考えると、そもそも高度の信頼関係を拠りどころとして契約が成り立っているはずである。
  • 民法の委任又は準委任に基づき、契約は「依頼」に基づき「承諾」し、管理組合本位で実行されるはずである。
  • とはいうものの、時と場合によっては双方の利益が相反する関係にある
  • プロ集団対素人集団であり、双方の立場が対等でない関係にある

また、管理会社とマンション管理士の双方の誤解に関する部分では、管理会社がマンション管理士に対して抱いている誤解などを「迷言集」として以下のように紹介をしました。

  1. マンション管理士として実力をつけるには、管理会社への勤務実績が絶対に必要!
  2. ・重松マンション管理士事務所では、業務提携も含めて、すべてのマンション管理士が管理会社勤務経験がないぞ!
    ・というよりも、私は管理会社経験者は、絶対に採用しないぞ!
    ・普通の会社の管理職を経験している人の方がはるかにレベルは高いぞ!
  3. 管理会社が優秀でしっかりしていれば、管理組合にマンション管理士は不要である。我々がしっかりしていないからマンション管理士に付け込まれるのだ!
  4. ・管理会社がしっかりしていて、マンション管理組合が無関心でしっかりしていなかったら、どんな恐ろしいことになるのか考えたことがあるのだろうか?
  5. 当社にもマンション管理士はたくさんいます。ですから管理組合がマンション管理士をわざわざ起用しなくても当社で間に合います!
  6. ・管理会社と管理組合は基本的に利益相反になることが本当にわかっているのだろうか?
    ・管理会社に所属するマンション管理士は、管理会社から給料をもらっている以上、資格のない社員よりも知識がある「管理会社の社員」に過ぎない。
    (どんなに優秀でも、独立したマンション管理士と同じように管理組合の立場に立つことはできないため、代わりにはならない)

最後に、私が管理組合から相談を受け「どのような管理会社が良い管理会社ですか?」と聞かれたときの回答を紹介しました。
私は、いつもこのようにいうことにしています。

  1. 社員が不祥事を起こして管理組合の財産を棄損したときには、即座に弁償できる財力をもっている会社
  2. フロントマンは、管理組合(理事会)から様々な要求を受けてこなさなければならないが、その作業を会社としてきちんとバックアップすることができる会社
  3. フロントマンの担当管理組合の件数が10件以下であること
  4. 下手な専門知識よりも、ビジネスマンとして社会人としてのきちんとしたマナーを教育している会社

当日の様子

|120419seminar-1.JPG|管理会社の社長や取締役も含めて、フロントマン全員が集まりました。
紹介されている私もやや緊張気味なのが分かります。|
|120419seminar-2.JPG|当日は、講演1時間、質疑30分のスケジュールでスタートしましたが、あっという間に終了しました。
振り返ってみると、私も初めてのテーマだったのでうまく話すことができませんでしたが、言いたいことはフロントマンの皆様に伝わったようです。
フロントマンが、管理組合の立場に立って仕事を行い、管理組合から信頼されて会社も利益が出るようなwin-winの関係を築くことができたら更に良いと思います。|