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大規模修繕工事等の設計コンサルタントの選定について

大規模修繕工事設計監理方式で進めることが決定している54戸のマンション管理組合から、大規模修繕工事コンサルタントとして、設計コンサルタントと工事業者の選定を依頼されて業務を進めています。
私のマンション管理士事務所ホームページをご覧になった理事の方からの問い合わせで、大規模修繕工事の勉強会を開催したことがきっかけでした。
勉強会では、大規模修繕工事の目的や、進め方から始まり、業界の談合の実態や管理組合として注意するべき項目などをお話しました。
私の事務所から15分と近いこともあり、上記のようなコンサルティング・サポート契約を締結しました。
ところで最近は、管理組合が設計コンサルタントを選定する際に、マンション管理士が関与して選定作業をサポートするケースが増えています。
私の顧問先でも、昨年から今年にかけて建物診断や大規模修繕工事コンサルティング・サポート業務が多いので、同様のケースが多く見られます。
ところが、マンション管理士会に所属する会員の中には、改修設計を主業務とする建築士事務所を開設しているメンバーもたくさんいて、このことに批判的な意見を持っている人達もいらっしゃいます。
この方たちの主な主張は、、、

  • マンションの大規模修繕工事は、建築や設備の専門的知識が必要なので、建築士資格を持たないマンション管理士が関与しても、適切な助言ができない。
  • 大規模修繕に詳しくないマンション管理士では、コンサルタントの選定基準等において的外れな助言をしている。
  • そもそも設計コンサルタントを施工業者と同じ扱いをして、資本金や会社の規模を比較しながら選定すること自体が失礼である。
  • マンション管理士制度ができるはるか以前から、われわれはマンション管理組合のパートナーとして管理組合を助言、指導してきた。建物診断や長期修繕計画作成、そして大規模修繕工事にマンション管理士が関与する必要はない。

というようなものです。
マンション管理士会に所属する1級建築士以外でもこのような主張をする方々がいらっしゃいます。
このような主張をなさる原因は、多くの場合、大規模修繕工事におけるマンション管理士と建築士の業務の違いを良く理解されていないからだと思います。
とはいっても、この違いを説明すると結構時間がかかったりしますので、その説明は別の機会にしたいと思います。
ただし、彼らの主張にも一理あることは認めます。
例えば、設計コンサルタントは「評判」「実績」「人柄」などで決めるべきであり、事務所の資本金や従業員の数だけで優劣を決めるものではないと思います。
また、建築業界のことも分からず、建物診断や長期修繕計画書の作成、大規模修繕工事等を全く経験したことのないマンション管理士が、管理組合が頼りにしなければならない大切な設計コンサルタントを選ぶ作業に関与しても、適切な選定基準などを的確に助言できるのか疑問です。
しかし、私はサラリーマン時代からの業務経験と、マンション管理士として独立してからの業務経験において、次のことを確信しています。

  • 建設業界では今でも談合が行われていて、果たして完全になくなるのか疑問である。
  • 十数年に1回の大規模修繕工事等は、設計業者や施工業者にとっては大きな利益を生む大変魅力的な業務であり、また、お客様であるマンション管理組合を、”おいしい”素人集団とみなして、不誠実な対応をするところが存在する。
  • 「私たちは、管理組合の立場に立って・・・」といいながら、業者間の談合を取り仕切るコンサルタント(や管理会社)が存在する。

私が、過去に書いた「マンション大規模修繕工事における談合の実態について」を見ていただければある程度談合の実態が分かると思いますが、これを書いた後に関与した大規模修繕工事でも、談合の疑いが強い物件がいくつもありました。
あまりにもひどい場合は、着工を半年先に延ばして、再度業者の募集をやり直したケースもあります。
では、談合は防げないのでしょうか?
設計コンサルタントは皆信用できないのでしょうか?
決してそういうわけではありません。
実は最近、興味深い論文を拝見しましたのでご紹介したいと思います。
一般社団法人マンションリフォーム技術協会から、平成22年6月1日に発行された「MARTA 第12号」に、「コンサルタントとのつき合い方」というテーマで、宮城設計一級建築士事務所の宮城秋治氏が寄稿されています。
その中で宮城氏は「コンサルタントの選び方」について以下のように述べられています。

  • 公開ヒアリングをして十分に競争原理をを働かせることは重要である。
  • コンサルタントを施工業者と同様の領域でくくって選定してはいけない。
  • 選考基準は、実績と評判から得られる信頼に依るべきである。
  • マンション管理士がコンサルタント選びをコンサルティングしていることもあるが、修繕に詳しくないと選考のプロセスから見積仕様書、選考基準まで的を外してしまっていることもある。
  • 理想は、修繕の勉強会等に講師として派遣されて、理事会や居住者と交流を重ねながら信頼できる設計者かどうかを見極めてもらうことである。
  • そのためには、設計者もじっくり時間をかけて情報提供を惜しまず、分かりやすいプレゼンテーションを繰り返す必要がある。

私も同感で、多くの部分で反論する余地はありません。
このようなプロセスを経てコンサルタントを選定すれば、信用できるしっかりしたコンサルタントを選定できるのではないかと思います。
しかし、宮城氏は次の段落で「悪質コンサルタントに注意」として、以下のことも述べていらっしゃいます。

  • 設計事務所の業務報酬は国交省告示で決められており、同じ業務内容であれば、複数の設計事務所から見積をとっても、医者の診療報酬と同様に金額の差は大きくないはずである。
  • ところが告示に従った金額の2分の1や3分の1という極端に安い金額で受注するコンサルタント会社が横行している。
  • このようなコンサルタント会社は、施工会社からバックマージンやキックバックを受け取って安価な受注金額の補填をしている。
  • 施工会社選定の見積もり合わせは形式上行うが、最初から施工会社が決まっている出来レースを仕組んでいる。
  • このような会社はマンションの大規模修繕工事を商売としてだけしか見ていない。

このことにも全く同感で、私が日頃から主張していることです。
宮城氏は、マンションの改修工事を「商売」として捉えるのではなく、「都市づくり」や「社会環境の整備」にまで踏み込んだ考え方に立ち、長年取り組んでこられたのだと思います。
同氏の考え方には私も共感し敬意を表しますが、残念なことに、実際には悪質な設計コンサルタントが存在していることも事実です。
私は、設計コンサルタントの選定に絶対的な基準はないと考えていますが、強いて言うなら、、、

  • 自分たちのために一生懸命働いてくれそう
  • 信頼できそう
  • 私たちの意見をきちんと聞いてくれそう
  • 素人の私たちに分かりやすく説明してくれそう

でしょうか。
管理組合が、マンション管理士を選ぶ際にもそのまま使えそうな基準です。
私は、例え価格が一番高くても(逆に一番安くても)管理組合が、その理由が合理的で、信頼に足る設計コンサルタントだと判断した時は、そのコンサルタントに発注しても良いのではないかと助言するようにしています。
また、最近では談合防止の観点から、工事業者の選定作業に関しては、コンサルタントにその作業をやらせないようにし、コンサルタントを募集する際の条件に謳ったりしています。
「設計事務所を信用できないのか!」とお叱りを受けるかもしれませんが、管理組合がコツコツ貯めた虎の子の修繕積立金を、不当な手段で奪われることは絶対に避けたいと考えており、例え一部でも不誠実な設計コンサルタントが存在する以上、少しでもリスクを回避するためにそうせざるを得ないのです。
なお、重松マンション管理士事務所では、管理組合から受け取る報酬のみで事務所を運営することを決め「ノーリベート宣言」をしています。
私もそんなに多くの設計コンサルタントとお付合いしているわけではありませんが、自分の業務を通じて、信頼できる設計コンサルタントを多く見つけることが出来るようにしていきたいと考えています。

設計コンサルタントヒアリングの様子

|consultant-03.JPG|今回は業界新聞の無料広告スペースを利用して設計コンサルタントを募集しました。
あまり大きくない規模の工事ですが、応募した設計コンサルタントは8社ありました。
統一仕様書に基づき、全社に見積もりを依頼し、その中から数社を選定して面談(ヒアリング)を実施しています。|
|consultant-04.JPG|各社の見積もり内容などを事前にチェックしたうえで、各社に対する質問事項を予め用意して確認していきます。
この日は、まず私が質問をした後に、各理事や修繕委員の方が気がついた点などを質問しました。
質問に対して分かりやすく丁寧に回答してくれるコンサルタントは信頼がおけると感じます。
今回は、平日の夜に実施したので、この日の終了はかなり遅い時刻となりましたが、業務を依頼する設計コンサルタントが決定したので安心しました。
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大規模修繕工事コンサルティング」に関する詳しい内容や当事務所の考え方などは、私のマンション管理士事務所 ホームページや特別ページをご覧下さい。